オーダーメイド家具のKIJIN

カテゴリ: すみだの会社

亀沢木工経営者インタビュー製造業

オーダーメイド家具事業のきっかけは商社時代の経験から

オーダーメイド家具の事業をするきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

家具の仕事に興味を持ったきっかけは偶然のようなもので、ファーストキャリアの商社での配属が家具を取り扱う部門だったんですよね。そこでは、ホームセンターで販売しているような量産品のカラーボックスを、例えば海外で1万台作って国内で売る、みたいな、そんな仕事をしていました。

たまたま家具と触れ合う仕事をすることになったのですが、量産品の家具は余り長く使うことができる製品ではありません。家具という商品そのものを取り扱うことは好きだな、と感じられたのですが、もっと長く使えて、人のこころを豊かにできるような家具を取り扱いたいと思うようになりました。

それは、やっぱり量産品では実現することが難しいですね。作るときに職人とお客様の想いが込められるオーダーメイドの家具だからこそ、世代を超えて長く使っていただけて、人の心を豊かにできる、と考えて、そんな家具の素材は何だろうなと考えたら、やっぱり木じゃないかな、と。木を使ったオーダー家具をやろう、と。そうして、気づいたらKIJINという会社を作っていました。

KIJINという社名の由来は何でしょう?木の人でKIJINですか?

もちろん木の人、のイメージもありますが、オーダー家具という商品は、そのかたちは人それぞれにあると思っています。例えばKIJINも、木の人だけでなく、貴い人も、喜ぶ人も、輝く人も、奇人も、鬼の人も、KIJINと読める。

なるほど、それでローマ字のKIJINなんですね

はい。ローマ字なら、色々な解釈ができる。オーダー家具も、色々なかたちにできる。テーブル一つとっても、自分が作りたいテーブルと他の人が作りたいテーブルが違う訳です。KIJINも、人それぞれのKIJINがあっていいんです。発音もそれぞれで、漢字も決まってないんです。

オーダーメイド家具は、具体的にはどのような商品を取り扱っているのでしょうか?

私自身はクリエイティブディレクションを担当していて、木に特化した、企画やデザイン、こういったものを作りましょうみたいな仕事をしています。日本全国の職人さんと提携して、お客様の要望に合わせて素材や加工のイメージをご提案して、作りたいものに合う工房さんに協力して作ってもらっています。

分かりやすい商品では、一枚板のダイニングテーブルや食器棚から、飲食店のテーブルやカウンター、椅子など、木の素材の家具なら何でも作ります。取り扱う材木もお客様のイメージに合わせて全世界どこの素材でも扱います。色が濃い目でシックな感じが良い、となったら北米のウォールナットを提案したり、国産の木が良いとの要望があれば探したり。

変わったものなら、檜風呂とか、壁面のカウンター什器とか、料亭さんの要望で7メートルの一枚板でカウンターを作ったりもしました。

7mの一枚板を、樹齢250年の阿蘇の山の木で調達、加工して、運送まで手配
音楽家の小林武史氏率いる株式会社KURKKU FIELDS社が運営する人と農と食とアートの総合施設にて、左官職人 久住有生氏とコラボしたカウンターテーブルを製作

木でできた家具の修理やリメイクもやっています。過去には、80年使った家具を修理したい、と相談を頂いて。おばあさんの嫁入り道具だった桐ダンスを、次の世代まで使いたいというご要望があって。昔ながらの桐ダンスがボロボロになってしまった部分を、一度表面を削って、もう一度塗装し直す。そうすると新品のようにきれいになるんですね。

木を丁寧に使えばずっと使える。修理することでずっと使うことをお手伝いできます。80年使ったものを、更に2世代使おうということもできるんです。

また、リメイクという作り方もあります。もともと座卓に使われていたロータイプのテーブルを、今風にダイニングテーブルに変えたいということで、リメイクしたりしました。木の家具だったら何でもできるというのが強みです。

 82年前に創られた桐たんすを修理した事例。祖母の嫁入り道具の桐たんすを、想いとともに娘の代まで引き継いでいくことができます

猫が繋いだ墨田区との縁から、下町の職人とのコラボや区との繋がりも

墨田区で事業を行うことになった縁はどのようなものでしょうか?

墨田区に会社を移したのは2020年頃でした。ちょうどコロナの緊急事態宣言が始まるぐらいに会社を移転したのですが、実は2016年くらいから墨田区には住んでいました。

墨田区に住もうとなったきっかけは、飼っている猫なんですよ。実は4匹の猫を飼っているのですが、都心で猫が4匹飼える物件ってなかなか見つからなくて。色々と探していたところ、偶然に墨田区内で見つけて、たまたま住んだのがきっかけですね。そのあとも引っ越したりはしていますが、今も墨田区在住です。

墨田区との縁をつないだ猫たち

それで、コロナ禍になって外出も制限されたりして、じゃあ会社も墨田区内にしようかな、と。現場やお客様のもとに伺って打ち合わせすることが多いですし、シェアオフィスでも良いよね、となった時に、近場にco-lab墨田亀沢というクリエイター専用シェアオフィスがあって、そこに会社を引っ越すことにしたんです。

墨田区に移ってきてからなにか変わりましたか?

墨田区に移ってきてからは、そうですね。仕事はやりやすいかな。地域柄、下町エリアなので色々な職人やクリエイターの人もいますし。浅草のレザー職人とコラボしたり、co-labのデザイナーさんにコンセプトのイラストを作ってもらったり。

墨田区は中小製造業が多いですからね。皮革や硝子、化学工場等もありますね

墨田区内の事業者さんとの連携も多いです。ものづくりって一つの素材だけでは完結できないので、その意味でも墨田区で色々な連携は取りやすいかな、と思います。

あとは、墨田区との連携もありました。SDGsウィークというイベントでうちの商品を展示させてもらいました。ものづくりのまち墨田というぐらいなので、墨田区自体がフットワークが軽かったりしますので、ありがたいです。商品の撮影も、センターオブガレージで撮影させてもらったりもしています。こういう、コラボの楽しさが墨田区にはありますね。

今後の展望はどのようなことを考えていますか?

co-labは、オフィス・本社機能としての位置づけで、今、別途店舗を作ろうという計画をしている。オーダーサロンというような。オーダーメイド家具の相談ができる、一枚板が並んでいるような空間を作りたいです。

墨田区内ですか?

そこは、物件次第ですね(笑)。今は物件調査中というイメージで、年内にはある程度かたちになれば、と。

墨田区内でしたらまた取材にきます(笑)。でも、墨田区内の会社が店舗を出した、でもいいですね。

そうですね。清澄白河とかいいよな、とか、逆に向島とかあっちのほうもありかな、とか。一見さんというよりはWebから相談したいという人が来てくれば。倉庫風に、実際の木材をみながら色々と意見交換するのもいい。Webで集客できる時代なので、Webの先のアクセスポイントとして秘密基地みたいな(笑)。

店舗では、販売とかも一部する予定です。サイドテーブルとか、わざわざオーダーメイドで作らなくても、という商品はオリジナルブランドとして並べておくのもありかなと考えています。

オリジナルのグッズとかも作っているので、これ(ネクタイ)とかは趣味的に作った商品ですが、ウケが良いですね。

木のネクタイですか、話に挙がるまで気づきませんでした(笑)

木でできたネクタイ。この動きをしていただくまで、全く気づきませんでした(笑)

言われてみれば、このネクタイなに?みたいな(笑)。木の名刺入れも作ったりしています。

なぜ木の小物を?

テーブルとか床とか、色々と木が使われているじゃないですか。でも身に着ける人はいないな、と。身に着けてみたいなと思いまして(笑)。

ものづくりは自分でやりたいことをやってみています。売れるかどうか、ではなくて、オリジナル商品をやってみて。木の名刺入れは。遊びでやっているとはいえ、数百個は売れているので、意外と。

「あなたの生活に、想いに寄り添える」家具屋を目指して

最後に、オーダー家具という事業に込めた想いを教えてください

想いがこもったものを、日常で使うのが良いですよね。想いが入ったものを使う人って素敵だと思うし、想いが込められた日常の生活って良いですよね。

普通の家具の商品は、買った瞬間が最高の状態で、どんどん劣化していくじゃないですか。でも、オーダーメイドで作った家具は、買った瞬間から想いが込められて、どんどん育てていくことができるんです。そういったものの使い方が素敵だな、と思います。

今から金八先生みたいなことを言いますけど(笑)、想いの漢字を思い浮かべると、木と目。もくめ、なんですよ。もくめだけじゃなくて、その下に心がはいっている。無垢の木目に対して、人のこころが入って、想いになる。木材で心を込めてオーダーメイドで大切に使っていただくと、その人のこころが豊かになる。想いが込められたものになる。そういったものを作っていきたいと考えています。

会社情報

会社名(称号) 株式会社KIJIN
本社所在地〒130-0014 東京都墨田区亀沢4-21-3 ケイエスビル3F
代表電話番号03-6658-5170
FAX番号03-6658-5293
営業時間10:00-20:00(年中無休)
メールアドレスinfo@kijin.co.jp
事業内容・オーダーメイド家具の製造企画販売
・空間デザイン企画
・木製プロダクトの企画製造販売
・木製品の修理
・リメイク
たかなか
この記事を書いた人:

たかなか

TenCy株式会社 代表取締役/中小企業診断士。 墨田区のWeb・デザイン制作会社の代表です。中小企業診断士として地域支援もしており、墨田区地域を中心に活動しています。